SAKIORI(裂き織)を世界共通語に
「裂き織」の起源は江戸時代中期。寒冷な気候のため綿や織維製品が貴重だった東北地方にあると言われています。当時は日常生活に用いる衣類や布団などの布を、裂いて細く繊維状にし、ねじりながら織り上げていました。17世紀になって、東北地方にも古木木綿(木綿の古布)が入るようになり、その肌触りのよさは多くの人を魅了しましたその。しかし、古布とはいえ安いものではなかったため、貴重品として「使い切る」文化の中で裂き織技術が発展していきました。 近年は、繊維製品が手に入りやすくなり、裂き織はあまり織られなくなりましたが、一方で、その独特の風合いや芸術性、古布や残反(生地の残り)を利用するという特色が注目され、アパレル・インテリア系のデザイナーからもデザイン性の高いエコファブリックとして見直されてきています。裂き織は、その工程のほとんどが人の手で行われます。布を細く裂いてよこ糸をつくり、経糸を通した織り機で一段一段ていねいに織り込んでいく。それは単なる作業ではありません。人の手を通じて、ものを愛おしむ気持ちも一緒に織り込まれています。だからこそ、機械では表現できない暖かみのある独特な風合いを生み出すのです。眠ったままの布と、技術を活かす場のなかった障がい者たち、そして細々と受け継がれる東北の伝統工芸。どれも「埋もれたままではもったいない」ものばかりです。裂き織によってそれぞれに光を当て、社会の中で活かされるようお手伝いをしたい。私たちの活動は、それを実現する大きな可能性を持っていると信じています。